トレンブルシアター2022

精神病院つばき荘 再演

作:くるみざわしん
演出:大内史子

出演:川口 龍、土屋 良太、近藤 結宥花

東京公演
2022年10月12日(水) - 16日(日)
下北沢 シアター711
→公演情報(CoRich舞台芸術!)

大阪公演
2022年10月7日(金),8日(土)
イコーラムホール

岡山公演
2022年10月22日(土)
倉敷市民会館大会議室
2022年10月23日(日)
天神山文化プラザ

ギャラリー

トレンブルシアター2021

鏡よ鏡

脚本: 渡辺えり
演出:木内希
出演:土屋良太、菅原鷹志

2021年6月17日(木) - 20日(日)
下北沢OFF・OFFシアター
→公演情報(CoRich舞台芸術!)

「夢見る力を再確認する」


これは菅原鷹志さんに取材して書いた、菅原さんの自叙伝である。
菅原鷹志さんは劇団3〇〇の旗揚げメンバーだったもたいまさこさんの東演の養成所時代の同期で、もたいさんが踊りの上手い同期がいると紹介してくれたのだった。
ミュージカルや音楽劇が大好きだった私は上演作品に歌と踊りを入れたくて渋る劇団員たちに無理やり歌って踊ってもらっていたのだが、菅原さんに振り付けをお願いしてから劇団員たちの踊りに対する意欲も強くなり随分助かったものだった。そして菅原さんは役者からダンサーへと変身して行き、東京ボードビルショーやワハハ本舗といった劇団の振り付けをする日本指折りの舞踏家となっていく。
菅原さんプロデュースの新作を頼まれたとき、マイケルジャクソン好き、踊り好きの劇団主演男優土屋良太とのコラボを考えた。
福島と新潟雪深い地の二人、演劇好きの二人のコラボでもある。
初演も再演時も残酷で優しい魅力的な作品になっていた。
22年前に書いた自分の戯曲の台詞が今の自分にも向かってくる。
見えるものと見えないもの、聴こえるものと聴こえないものいつもこの二つが心に潜んでいるものたちの雲をつかむような果てしのない夢見る力。
そういうものをこのコロナ禍に再確認するような舞台である。

渡辺えり(劇作家・女優)

ギャラリー

トレンブルシアター2020
くるみざわしん最新作一人芝居

私  精神科医編

作: くるみざわしん
出演:土屋 良太

2020年10月22日(木) - 25日(日)
下北沢OFF・OFFシアター
→公演情報(CoRich舞台芸術!)

「完全に治ったという証明書を持って来いって
職場から言われたんですけど」


診察でそう打ち明けられる度に、またかと思う。医師になった当初は「申し訳ないんですけれど、『完全に』は証明できないんですよ」と断っていたが、これって職場から病者を排除するために雇い主が医者の証明書を悪用しているだけじゃないかと気が付き、職場の上司に来院を促して、患者のいる前で、「ガンバレと早くを職場の禁句にしてください」と言うようにした。上司はたいてい苦虫を噛み潰した顔になる。私は苦虫になった気分で患者を見る。うっすら笑っていることが多い。しぶとい上司だと「ガンバレと早くを禁句にしたら仕事になりません」と言う。「じゃ、ユーモアを忘れないで」と返すと目を白黒させる。上司もたいへんなのだ。
無理無体な要求をあの手この手で切り抜けないと成り立たないのが精神科医療の現場だが、公演するなら検査を受けて新型コロナにかかってないことを証明しなさいという要求にはマイッタ。検査でわかるのは限られた正しさだし、感染症は証明書発効後にうつる。実のない診断書を掲げないと芝居ができない。排除される。お客様への誠意がないと言われる。今度は私が当人になって『完全に』を証明しなくてはならない。二、三万払って検査を受ければ証明書を書く医者はいる。金がないなら無償で検査を提供しますよという財団もある。新型コロナを商機に自由診療を拡充し、保健診療を切り崩して一儲けを企む方々に頭を下げるべきか。アメリカで新型コロナの死者が多いのは医療格差に原因があり、その元凶は市場原理に貫かれた医療体制にある。検査を治療でなく、不安の解消のために売り込む手口は実は不安をあおり、排除の論理で世の中を串刺ししてゆく。自粛警察ここにありだ。
「コロナよりも人が怖い」―敬愛する先達の声が聞こえる。どうせ立つなら排除される側に立つ。芸術も医療もかくありたい。それでないと守れない当事者性を失調したくない。新型コロナが世に登場する前に、そんな思いで書いた一作を今、世に問うてみたい。

くるみざわしん(劇作家、精神科医)

ギャラリー

トレンブルシアター2019

精神病院つばき荘 再演

作: くるみざわしん

出演:川口 龍、土屋 良太、近藤 結宥花

静岡公演
2019年9月28日
伊東市民劇場 (新生 市民劇場) ひぐらし会館

浅草公演
2019年10月5, 6日
イリヤプラスカフェカスタム倉庫

沖縄公演
2019年10月12, 13日
パレット市民劇場

京都公演
2019年10月14日
龍谷大学 響都ホール


静岡公演
2019年9月28日
伊東市民劇場 (新生 市民劇場) ひぐらし会館

浅草公演
2019年10月5, 6日
イリヤプラスカフェカスタム倉庫

沖縄公演
2019年10月12, 13日 パレット
市民劇場

京都公演
2019年10月14日
龍谷大学 響都ホール

トレンブルシアター第2回公演

おはなし、お父さん

作: くるみざわしん
出演:川口 龍、土屋 良太

2019年6月7日(金) - 9日(日)
新宿ゴールデン街劇場
→公演情報(CoRich舞台芸術!)


「人種差別と精神医療の芝居を上演したい。
書いて欲しい」


―そう友人から頼まれて「いいですよ」と引き受けた。軽い気持ちからではない。人種差別、精神医療に友人がどんな思いを持っているのかは十分に想像がついた。
友人は元教師で、退職金をつぎ込んで大阪の桃谷にフリースペースを作った。そこでその芝居を上演したいというのだ。桃谷と聞いても関東の方にはピンとこないかもしれない。1973年の地名改正で地図から消えた町・猪飼野。在日の詩人・金時鐘が「見えない町」と詩によんだ、在日コリアンの町。その一部が今、桃谷と呼ばれている。朝鮮への侵略、植民地支配を認めず、隠そうとする「我が国」で、猪飼野の小学校に勤め、退職後も猪飼野から発信を続ける友人の思いに応えたい。 
頭に浮かぶのは、数年前に駅前で繰り返されたヘイトスピーチの光景。ヘイトスピーチに抗うカウンターの文言を書いたプラカードを持って私も街頭に立ったので、渦中にいたといっていい。あの渦のなかで味わった気持ちを軸に、ヒトラーとフロイトが対決する架空の物語を書き上げた。差別の解消に尽力すべき精神医療が差別を生み、助長する側にあることへの医療当事者としてのいらだち。表現の自由を言い訳にヘイトスピーチを繰り返す人々に、演劇という表現にたずさわる者として表現の自由の行使とはどういうものなのか、その実例を提示しなくてはならないあせりもあった。渦を巻く憎しみの真ん中に立つ術として医療と芸術はあるはずだ。 
1時間でという友人の要請には応えきれず、書き上げた脚本は制限時間をこえた。慌てて短縮版を作成したが、もとの一編のノーカット版が宙に浮いた。未練もあってその一作を土屋さんにお見せしたところ、今回の上演が実現した。会場は前作「精神病院つばき荘」に引き続き、新宿ゴールデン街劇場。西と東で上演にふさわしい場所を得た。どうか劇場に足を運んで欲しい。ヒトラーとフロイト。二つの力が出会って生まれる憎しみの渦の真ん中に。

くるみざわしん(劇作家、精神科医)


ギャラリー

トレンブルシアター旗揚げ公演

精神病院つばき荘

作: くるみざわしん
演出:土屋 良太
出演:川口 龍、土屋 良太、近藤 結宥花

2018年12月13日 - 16日
新宿ゴールデン街劇場
→公演情報(CoRich舞台芸術!)


「精神科医にはクリーンとダーティの2種類があって、君らは、残念かも知れへんけど、
ダーティの方へ行くわけや」


―先輩医師の言葉には自嘲の趣があって、新人の私は「ダーティ」とは何なのかを知らないまま笑った。思い知ったのは、当直で行った郊外の精神病院の夜の回診でだった。内側から開けることのできない部屋に何年も収容されている人、ベッドに毎晩くくり付けられている人を診察し、カルテに記載しないといけない。私のその行為でその人の「隔離」「拘束」は続く。
診察したくない、カルテ記載をしたくない。この人を解き放つのが治療ではないか。しかし、私は他の医師と同じように診察し、カルテ記載をした。私は「ダーティ」となり、その後も汚れ続けた。
精神科医として働いて20年。増す一方の汚れをどうにかしたい。その一念で書き上げた一作が土屋さんの目にとまり、新宿ゴールデン街で上演される。うれしい。汚れを落としたいわけではない。光をあてて、正体をもう一度とらえたいのだ。

くるみざわしん(劇作家、精神科医)


ギャラリー